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その他 2023.10.27

令和5年度 業務功労表彰審査委員会における選考について

 

審査結果

 A 調査・設計・監理部門
入賞

ア「特に優れているもの」
 (重文)松城家住宅主屋ほか6棟保存修理事業

 B 報告書等作成部門
優秀賞

ア「報告書作成、保存図作成の業務が共に特に優れているもの」
 (重文)井上家住宅主屋ほか4棟保存修理工事報告書

優秀賞

イ「報告書作成、保存図作成の業務のいずれかが特に優れているもの」
 (重文)松城家住宅主屋ほか6棟保存修理工事報告書

奨励賞

ア「初めての工事主任として担当した業務が優れているもの」
 (重文)誓願寺山門保存修理工事報告書
 (国宝)孝恩寺観音堂保存修理工事報告書

 

講評

 A 設計・監理・調査部門

入賞 ア 重要文化財松城家住宅主屋ほか6棟 (設計監理)
 駐在現場で7年間、7棟の工事をやりきった。修理工事報告書も期限通りに刊行され、その内容もレベルの高いものであった。工事対象は狭隘な土地に建つ建造物群であり、各種段取りが交錯して難しいなか、適切に監理が行われたことは、高く評価できる。また、類例の少ない近現代建築で、各所に工芸的な手法が多用され、失われた技法や仕様も多い中、手探りで技法を再現するなど、多くの職種を最後まで牽引した点も好評で、今後の修理手法の確立に役立つ業務として、入賞に値すると評価された。

B 報告書等作成部門

(重文)井上家住宅主屋ほか4棟保存修理工事報告書
 井上家住宅は、10年の駐在工期を経てようやく完了した物件である。
 修理工事報告書は、本文・図版・写真からなる4冊組とし、保存図だけを1冊にまとめたことや写真を2冊に分けた編集は真新しく、思い切って分冊したことにより大変見やすく、様々な目的を持った利用者が使い易いよう工夫された報告書であると評価できる一方、折り込みをここまで使わなくてもできるのでは、という意見もあった。分冊の目的のひとつに「効率」があったのではないかとも思われる。
 見た目以上に情報量が多いが、期限内に刊行するため、いかに無駄を省き早く刊行するかの工夫がそこかしこに見られる。大量の写真を分冊することもその一つであり、無駄を省いた文章、挿図の配置・大きさなど、細かい部分にまで神経を使っていることがわかるこだわりが詰まった報告書である。構成も文化財修理の流れに沿っていて読みやすく、理解しやすい。担当者にとっては、もっと書きたいことがあったとも感じられるが、完成度は高く、秀逸な出来と評価でき、優秀賞に値すると評価された。
 なお保存図も、良く描けており、優秀賞に値すると評価した。

(重文)松城家住宅主屋ほか6棟保存修理工事報告書
 駐在現場で7年間、7棟の工事をやりきった。現場運営でも高い評価を得たが、修理工事報告書も、オーソドックスに作りながら、必要十分を満たしており、安心して読める。
 工事規模が大きいこともあって、注いだエネルギー量が抜きんでていると感じられた。膨大な情報量をコンパクトに収めている点が注目できる。家相図を読み解き、実際の建物の変遷と照らした点は面白く、学術的にも優れていると評価できる。巻頭に工事の要約がない点や挿図が少し小さい点など気になる点はあるものの、全体としては完成度の高い修理工事報告書として、優秀賞に値すると判断された。

(重文)誓願寺山門保存修理工事報告書
 非駐在現場でありながら、修理事業関係業務をほぼ一人で行った上、修理工事報告書も期限内に刊行されたことは大いに評価できる。昭和26年に解体修理が実施されているが、その際修理工事報告書が刊行されていなかったため、半分は昭和26年当時の修理工事報告書草稿を元に編集されている。また、図面・写真も当時のものを多く掲載している。その分、屋根葺替に関する詳細な調査はほとんどなく、塗装の科学的調査の考察が少ないのは惜しまれる。昭和26年当時の草稿を掲載することは資料的価値としては大きいが、今回の修理から得られた情報との対比などがあればもっと良いものになったと思われる。初任主任の修理工事報告書としては、一定の評価ができると判断し、奨励賞を贈りたい。

(重文)孝恩寺観音堂保存修理工事報告書
 国宝建造物であり、工事対象にも注目が集まるなか、工事主任がたびたび交替し、そのなかでも最も若い主任技術者が最後の担当者となり、修理工事報告書をまとめた点は評価できる。全体の構成は、オーソドックスで見やすい。非駐在ながら軸部の痕跡調査もしっかりと実施し、図は少し見にくいものの軒の復原図まで提示しているのは好感が持てる。観音堂の変遷をまとめたことも評価したい。大正期の修理も適確に用いながら全体を構成良くまとめている。ただし、図版の大きさや組物の配置図の作り方、軒廻りの考察など気になる部分も少なくなく、もうちょっと鋭い考察ができたのではないかとの意見もあった。
 非駐在であることを考えれば、瓦調査や年輪調査を再委託して多角的に考察し、まとめている。以前にも候補には挙がったことがある担当者ではあるが、効率的に意義深い修理工事報告書を目指す姿勢が伺え、優秀な修理工事報告書であることを評価し、奨励賞とした

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